第3夜 熱がこもるって何?

荏原ホームケアクリニック 川口です。

ご高齢の方を介護している方であれば

一度は経験したことがあるのではないでしょうか?

ご高齢の患者さんの体温を測ると
具合が悪い訳でもないのに37度台の微熱が出ているという現象。

「いつもはこんなに体温が高くないのに大変だ!」

慌てた患者様のご家族は主治医の先生を呼びます。

すると先生が部屋に入るなり

「熱がこもっているかもしれないですね。

お部屋の温度を涼しくしてみましょう。」

と言います。

「 ??? 
熱がこもる ってなんですか?」

今回は“熱がこもるとは?”

そして“快適な部屋の温度ってどれくらいなの?”

という問題についてお話をしてみようと思います。

まずは原点に戻って考えてみましょう。

前回、脱水のお話しをした時に人間の身体の中にある

水分量のお話しをしましたね。

そこで水分量は身体にとって大きな役割を占めているということを

御理解頂けたと思います。

ではそんなに大事な身体の中にある水分を保つために

Q体温はどのようにして調節されているのか

という点がポイントになります。

  • 人体には、外の気温が変化しても、体温を約36~37℃に保つ
    機能が備わっています。

寒い時には震えて熱をつくりだし(産生)、暑い時には汗を出して
熱を“放散”させる、そんな調節を行っているものが
自律神経と呼ばれているものです。

ここで出て来た「産生」「放散」というキーワードを元に
例え話で少しだけ詳しく説明していきたいと思います。

【熱の産生と放散の仕組みについて】

ますは自動車のエンジンをイメージしてみましょう。
車は走り出すとエンジン自体が熱くなり
エンジンが暑くなると周囲の空気も暑くなります。

人間も同じです。
人体は、常に熱を作り出し、周囲に放散しています。
寝ている時やじっとしている人に比べて

運動をしている人の近くにいると暑いですよね。

このように活動時には、より多くの熱を産生、放散します。

熱の産生には様々な細胞が関わっており、

細胞が仕事をする時に熱が産生されます。これを代謝と言います。

その中でも、骨格筋、肝臓や心臓、腎臓などは

すごく頑張って仕事をするので熱の産生量が多いのです。

特に骨格筋(筋肉)は熱を非常に多く産生します。
骨格筋は人体に非常に多く存在し、運動で体が熱くなるのは

主にこの骨格筋が仕事(収縮)して熱を産生しているのです。

寒い季節には、体が震えます。
この震えは、骨格筋の小刻みな仕事によって出現しています。
こうして熱を作り出し、体温を一定に保つようにしているのです。

体が熱くなると熱は周囲に逃げて行き、それでも追いつかないと汗をかきます。
これは体内の熱を汗に乗せて、体外に捨てるだけではなく
かいた汗が蒸発する時に、体から大量の熱を奪っていくのです。

風邪をひいて高熱を出した時を想像してみてください。

寝て起きたら大量に汗をかいていて、平熱になっている。
誰もが一度はこのような経験をした事があるのではないでしょうか。

体温調節の仕組みについて、何となくイメージが掴めましたか?

では、最初の問題に戻りましょう。

暑い時期、高齢者の方は体調の変化もないのに微熱を出す時があります。

どうして微熱が出るのでしょうか?

Q高齢者は、熱がこもりやすいの?

  • 上で述べたように、身体は暑いと判断すると“汗を掻く”事で
    体温を調節します。しかし、体内から水分が減ってしまうと 
    どうなるでしょうか?

そうです、汗の出る量が少なくなります。
すると熱の放出が抑制されてしまい、熱が体内にこもってしまうのです。  
第一夜の体の水分量のグラフを思い出してください。

年齢を重ねると徐々に体内の水分量が減って行きます。
そのため、軽い脱水でも汗の出る量が減ってしまい

結果的に熱がこもってしまうのです。

だからこそ、体温調節の補助として高齢者の方にとっては
エアコンは必需品なのです。

夏場は暑い!でも身体はあまり暑くないしエアコンの風が嫌い!

冬場は寒い!風邪をこじらすと大変だからエアコンをつけて

布団もかけてとにかく温かくしよう!
一つの考えに固執して全体の体温調整が出来ていないと

知らない内に患者様の体調不良を引き起こしてしまう可能性が出て来ます。

では

Q快適な部屋の温度ってどれくらいなのでしょうか?

  • その時の外気温で多少の差は出ますが、設定温度は25~28℃を
    目安にするのが一般的です。

室外との温度差は5℃程度が目安と言われています。
あまり冷やしすぎても、激しい温度差により体温調整、
発汗など調整している自律神経のバランスが崩れてしまうことがあります。だるさ、肩のこり、頭痛、食欲低下、下痢、不眠など様々な
症状が現れることもあるため、冷やしすぎにも注意は必要です。

次に、気をつけていても、熱がこもってしまった場合、
どうしたらよいでしょうか。
「体を冷やしてください」と先生に指示されたのですが・・・

Qどこをどう冷やせばいいの?

  • 全身を冷たい濡れタオルで拭くだけでも、かなり効果がありますが、
    よりしっかり冷やすために、以下に述べる方法をお勧めします。

首には頸動脈、脇には腋窩動脈、脚の付け根には鼠径動脈といった
太い血管が存在します。
こういった所に保冷剤や凍らせた小さいペットボトルなどを、

薄いタオルで巻いて当ててください。
頭と両脇の三か所を冷やすのを三点クーリング、両脚の付け根を加えて

五か所を冷やすのを、五点クーリングと言います。

こうすることによって、冷やされた血液が全身を巡り、

効率よく体温を下げることができます。

これは他の病気で高熱が出ている方にも使える技術ですので、
皆さん覚えておいてくださいね!

今回は非常に長くなってしまいましたが、最後まで読んで頂き、
ありがとうございました。

季節の変わり目は体調を崩し易いのでみなさん十分注意して下さいね。

次回第4夜は「高齢者の栄養 低栄養とは?」を勉強して行きます。